ディスプレイやプリンターなどのカラーマネジメントを行うとき、照明はどのようなものを使えばよいか迷うかもしれません。
電気量販店の店頭にはカラーマネジメントに適した照明機器はあまり置いていないことも多いです。
カラーマネジメントを行うにあたり部屋の照明はどのようにすると良いかを紹介します。
機器などを買うときの参考情報
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
機器を使用する私たちユーザーもそれらの国際問題の当事者の一人です。
物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選んで、やりがいのある仕事や創作活動をしましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物には武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり児童労働につながっているものがあります。
紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうか、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかなどを確認してみましょう。
「メーカー名 + 紛争鉱物」などで検索すると、メーカーの公式サイト内の原料調達に関する取り組みや調査結果の報告のページなどが見つかります。
詳しく取り組みや結果を報告しているメーカーもあれば、報告などがほとんど見つからないメーカーもあります。
参考



参考書籍
以下の本で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることなどが説明されていました。
使用後の壊れた製品の回収
まだ使えるものの不要になった機器はリサイクル店などの買取に出して引き続き誰かに使ってもらいましょう。そうすると新品を1台作らずに済むので環境負荷を抑えられます。
壊れた機器などは法律に従って小型家電リサイクルに出すなどして再資源化します。
「メーカー名 + 回収」などで検索すると各メーカーの回収・再資源化に関する説明のページが見つかったり見つからなかったりします。
自社の製品を売るだけでなく回収まで案内しているメーカーを応援しましょう。
どのような機器を選べばよいか
物の色を観察する照明に関する規格の例
物の色を見るときの照明の条件などに関する規格がいくつかあります。
以下はその例です。
日本印刷学会推奨規格
印刷関連の分野に「日本印刷学会推奨規格透過原稿, 反射原稿及び印刷物の観察方法JSPST-1998」という規格があります。
紙に印刷したものなどの反射原稿を見る場合の照明はイルミナントがD50で、平均演色評価数Ra95以上、特殊演色評価数Riはi=9〜15のそれぞれで90以上、などの規定が書かれています。(さらに細かい規定があります。)
JSPST-1998は蛍光灯の使用を前提にして作られた規格ですが、「色評価用LED照明を用いた印刷物観察条件のガイドライン」によれば色評価用LEDの条件としてもJSPST-1998を使用してほぼ問題ないようです。
参考リンク
ISOの規格
画像の観察条件に関するISO規格にISO 3664:2009 グラフィックテクノロジーと写真—視聴条件 というものがあります。
参考リンク

JISの規格
JIS規格で照明の演色性関連のものに「JIS Z 9112:2019 蛍光ランプ・LEDの光源色及び演色性による区分」というものがあります。
参考リンク
演色性が高く、用途に合う色温度の機器を使う
地球に住んでいる人にとって物を見るときの光の代表的なものは太陽の光なので、物の色は屋外の自然の光の下で見た色が標準的なものになります。
照明機器の仕様に演色評価数というものが記載されています。CRIと書いてあったりします。演色評価数として平均演色評価数Raの数値が載っていたりします。大雑把な雰囲気で言えば演色評価数が100に近いほど太陽の光に近く、演色性が高く物の色を正確に見ることができる照明だと判断できます。
太陽の光でも日中と夕方や、晴れの日と曇りの日や、日の当たっている場所と日陰の場所など、状況によって色合いは異なります。
照明機器も、演色性の高さが同じでも様々な異なる色温度の機器があります。照明機器の仕様に昼白色や昼光色や電球色と書いてあったり、5000Kや6500Kや6700Kなどと色温度が書いてあったりします。
カラーマネジメントを正確に行うためには、できるだけ演色性が高く、自分の用途に合う色温度の照明機器を使います。
例えば以下のような環境にするとカラーマネジメントをしやすく作業がスムーズに進みます。
- 主にオフセット印刷関連の作業をしていて、モニターの色温度も約5000Kくらいに調整してある場合は、平均演色評価数Raが95以上で色温度が約5000Kの照明機器を使うと作業しやすいです。
- 主にD65の光を基準として使っている業界の作業をしていて、モニターの色温度も約6500Kくらいに調整してある場合は、平均演色評価数Raが95以上で色温度が約6500Kの照明機器を使うと作業しやすいです。
演色性の表記
照明の演色性を表す数値は平均演色評価数(Ra)以外にもいくつかあります。
平均演色評価数(Ra)で判断してたいていは問題ありませんが、この分野に詳しい人なら別の指標なども参照してより詳しく判断できるかもしれません。
メーカー公式サイトの製品紹介のページなどで、単なる平均演色評価数だけでなく演色性を評価する各試験色全ての試験結果が載っていたり、蛍光灯の演色性区分の「演色AAA」に相当する演色性があることなどが説明されている機器もあります。
演色性について説明しているメーカーのページの例

照明の色温度とモニターの色温度の関係
照明とモニターの色温度は同じにして作業すると、色の理屈から考えて作業がうまくいきます。
D50の光を基準として使っている印刷関連の作業をする場合は照明・モニターともに色温度約5000Kで作業します。
モニターに写真やレイアウトデータを表示し、色校正やプリンター出力や印刷結果を手元に置いて、モニターと紙への出力結果を比較したりします。
作業場の照明は約5000Kのものを使っていて、普段は印刷関連の作業が多いものの、今回はD65の光を基準として使っている業界のデータを扱う必要が発生したとします。例えば製品の実物が手元にあり、製品の撮影画像のデータの色を実物に合わせたいとします。
この場合、照明を約6500Kのものに付け替えるのが困難なら作業場の約5000Kの照明を使い、モニターも約5000Kのままで作業します。
作業は照明・モニターとも約5000Kの状態で行いましたが、5000Kの環境で正確に作業したなら、色温度約6500Kの照明の下で製品の実物を見て、色調整済みの画像データを色温度約6500Kのモニターで表示してもほぼ同じ色になっています。
ですので、6500Kの環境で作業する場合と5000Kの環境で作業する場合の両方がある人なら、より頻繁に作業する方に合わせておくと良いのではないでしょうか。
作業の多くはオフセット印刷の仕事で、たまにウェブ用の繊維関係の画像調整の仕事もある、というようなケースなら照明もモニターも約5000Kにしておいて全ての仕事を5000Kの環境で進めておけば問題ない場合が多いです。
調整済みのデータをウェブに載せて、ウェブサイトの閲覧者がパソコンやモバイル機器の6500K前後のモニターで表示した場合もほぼ正確に表示されます。
具体的な高演色性の照明機器の例 法人向けなど
蛍光灯の時代よりLED照明は扱いがややこしいのでメーカーや店・業者に問い合わせましょう。そうするとスムーズです。
G13の口金の直管LEDランプ
LED専用の機器に取り付けたり、従来の直管蛍光灯用の機器に配線の工事を施した上で取り付けたりできるG13の口金の直管LEDランプがあり、高演色性の製品もあります。
機器などの配線工事は電気工事の有資格者でなければできないので、取り付ける場合はメーカーや店・業者に問い合わせて依頼する必要があります。
昼白色(約5000K)40形 の直管LEDランプの例
エコリカ ECL-LD4EGN-L3A2
40形 昼白色相当 ECL-LD4EGN-L3A2 の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 2100lm
- 口金 G13
- 消費電力 18W
メーカーのページ

エコリカ ECL-LD4EGN-L3ANN2
40形 昼白色相当 ECL-LD4EGN-L3ANN2 の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 およそRa97、特殊演色評価数 R9~R15 90以上
- 全光束 1900lm
- 口金 G13
- 消費電力 20W
メーカーのページ

エコリカ ECL-LD4EGN-L3ASS
40形 昼白色相当 ECL-LD4EGN-L3ASS の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 およそRa98、R9-R15 90以上
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 19W
メーカーのページ

エコ・トラスト・ジャパン TLSG40-502120HC
40形 5000K(昼白色)TLSG40-502120HC の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 Ra98、特殊演色評価数 Ri90以上
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 21W
メーカーのページ
京セラ 高演色LED CERAPHIC® LT5000-2200
LT5000-2200 の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 Ra95
- 全光束 2200lm
- 口金 G13
- 消費電力 20.2W
メーカーのページ
京セラ 高演色LED CERAPHIC® LT5000-1700
LT5000-1700 の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 Ra95
- 全光束 1700lm
- 口金 G13
- 消費電力 16.1W
メーカーのページ
昼光色(約6500K)40形 の直管LEDランプの例
エコリカ ECL-LD4EGD-L3A2
ECL-LD4EGD-L3A2の主な仕様
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 18W
メーカーのウェブサイト

エコ・トラスト・ジャパン TLSG40-652120HC(受注生産)
40形 6500K(昼光色)TLSG40-652120HC の主な仕様
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 Ra98、特殊演色評価数 Ri90以上
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 21W
メーカーのページ
一体型LEDライトなど
現在一般的な器具本体とLED光源が一体になっている照明機器で高演色性のものも多数あります。
昼白色(約5000K) の一体型LEDライトの例
パナソニック「iDシリーズ」高演色タイプ
パナソニック「iDシリーズ」という照明機器に昼白色(5000K)の高演色タイプもあります。
「iDシリーズ」は器具本体と光源の組み合わせを選べるとのことで、従来の蛍光灯の照明器具からLEDにスムーズに変更することを考慮した「リニューアル専用器具本体」というものも用意されているらしいです。
ベースライト リニューアル専用器具本体の特長|Channel Panasonic – Official
メーカーのページ

京セラ 高演色LED CERAPHIC®
京セラの高演色LED CERAPHIC®という製品に種々のタイプの昼白色(5000K)の製品があります。
メーカーのページ
東芝ライテック LEDベースライトTENQOOシリーズ LEEM-40203N-A3-SO(セミオーダー)
器具本体とLEDバーの組み合わせを選べる東芝ライテックのTENQOOシリーズという照明機器に昼白色(5000K)の高演色タイプAAA相当 LEDバーもあります。
40形 5000K(昼光色)LEEM-40203N-A3-SO の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 Ra98
- 器具光束 1,800lm
- 消費電力 19.5W
メーカーのページ
昼光色(約6500K) の一体型LEDライトの例
東芝ライテック LEDベースライトTENQOOシリーズ LEEM-40203D-A3-SO(セミオーダー)
器具本体とLEDバーの組み合わせを選べる東芝ライテックのTENQOOシリーズという照明機器に昼光色(6500K)の高演色タイプAAA相当 LEDバーもあります。
40形 6500K(昼光色)LEEM-40203D-A3-SO の主な仕様
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 Ra98
- 器具光束 1,800lm
- 消費電力 19.5W
メーカーのページ
具体的な高演色性の照明機器の例 個人向けなど
自分では取り付けが困難なので、使いたい直管LEDを探した上で店に問い合わせる
蛍光灯の時代なら東芝やパナソニックの20形や40形や5000Kや6500Kの色評価用蛍光灯を購入して、20形や40形の蛍光灯用の灯具に付けて使えば良いだけで簡単でした。
LEDの場合、口金がG13の高演色性直管LEDを購入してそれを取り付け可能な機器に付けて使うしかなさそうです。しかし機器の配線の付け替えは電気工事有資格者のいる業者に依頼する必要があったり、LED専用の器具であっても片側給電方式と両側給電方式があって組み合わせを間違えると安全性が損なわれるなど、素人が適当に作業できるものではありません。
そこで、実店舗やオンラインストアで自分の用途に合う高演色性直管LEDを探した上、「この直管LEDを家の天井に取り付けたいのですがどうすると良いでしょうか」と実店舗やオンラインストアに問い合わせることをおすすめします。
追加で必要な器具と配線工事の段取りなどをしてくれれば、その案内に従って進めて高演色照明の導入が完了します。
もし特に対応をしてもらえなさそうな場合は、別の店であらためてLED照明を探して取り付け方法を問い合わせます。必要な器具と配線工事の段取りなどの対応をしてくれる店が見つかるまで続けます。
個人が店やオンラインショップで探して見つかりやすい高演色直管LEDの一例
昼白色(約5000K)40形 の直管LEDランプの例
エコリカ ECL-LD4EGN-L3A2
40形 昼白色相当 ECL-LD4EGN-L3A2 の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 2100lm
- 口金 G13
- 消費電力 18W
メーカーのページ

エコリカ ECL-LD4EGN-L3ANN2
40形 昼白色相当 ECL-LD4EGN-L3ANN2 の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 およそRa97、特殊演色評価数 R9~R15 90以上
- 全光束 1900lm
- 口金 G13
- 消費電力 20W
メーカーのページ

エコリカ ECL-LD4EGN-L3ASS
40形 昼白色相当 ECL-LD4EGN-L3ASS の主な仕様
- 色温度 5000K
- 平均演色評価数 およそRa98、R9-R15 90以上
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 19W
メーカーのページ

昼光色(約6500K)40形 の直管LEDランプの例
エコリカ ECL-LD4EGD-L3A2
ECL-LD4EGD-L3A2の主な仕様
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 18W
メーカーのウェブサイト

趣味の用途など、業務ほど本格的でなくても良い場合
業務で使うわけでなければ一般家庭の天井用のシーリングライトで演色性が高めのものを選ぶのもよいでしょう。
以下は家庭用のシーリングライトで演色性が高めのものも一例です。
メーカーのページ

メーカーのページ
DCL-41705
具体的な高演色性の照明機器の例 デスク用の照明
デスク用の高演色照明は手に入りやすいです。
5000Kのデスク用高演色照明
山田照明 Z-80PROⅡ
Z-80PROⅡの主な仕様
- 色温度 5000K(昼白色相当)
- 平均演色評価数 Ra97
- 定格光束 815lm
- 消費電力 12W
- 調光 無段階調光
メーカーのページ

山田照明 Z-208PRO
Z-208PROの主な仕様
- 色温度 5000K(昼白色相当)
- 平均演色評価数 Ra97
- 定格光束 1367lm
- 消費電力 19W
- 調光 ロータリースイッチ(7段階調光)
メーカーのページ

6500Kのデスク用高演色照明
山田照明 Z-209PRO
Z-209PROの主な仕様
- 色温度 6500K(昼光色相当)
- 平均演色評価数 Ra97
- 定格光束 1367lm
- 消費電力 19W
- 調光 ロータリースイッチ(7段階調光)
メーカーのページ

以上、カラーマネジメントを行うにあたり部屋の照明はどのようにすると良いかの紹介でした。
参考記事


