印刷関連業界では多くの場合色評価用の照明に約5000Kの高演色照明を使用します。
一方、それ以外の業界では約6500KのD65の光で検査などが行われる場合が多いです。
ここではD65の光が必要な場合の照明の例を紹介します。
業界によって作業や検査時の光の基準が違う
印刷関連業界等は5000Kを基準にしている
印刷関連業界などでは、原稿などを観察する場合に色温度が約5000KのCIEイルミナントD50に近い光を使うことが多いです。
D50はおおまかに言うと晴れの日の昼間の南側の光に似たような光です。
印刷原稿の観察がD50で行うことになっているので、印刷を行う前提の写真を扱う場合もD50に近い色温度約5000Kの照明で観察するのが適切ということになります。
一般的な業界は6500Kの光を基準にしていることが多い
CIE(国際照明委員会)では測色などを行うときの光(イルミナント)として約5,003KのイルミナントであるD50は補助イルミナントとして定めています。
一方、約2,856KのAと約6,504KのD65を標準イルミナントとして定めています。
D65はおおまかに言うと北の空の光に似たような光です。
そのため、印刷業界以外の一般的な業界では多くの場合約6500KのD65の光で様々な検査などが行われています。
D65の光で作業するために必要なもの
色差計、分光測色計などの測色器の場合 D50、D65などを設定で選べる
D50やD65など基準にする光が色々ありますが、製品の色や色の差を測るだけなら測色器の設定を変えれば済みます。
色を測るには物体に光をあててその反射光を受けて測定するため、測色器には実際の光源が内蔵されています。
その光源で測定した結果をもとに、コンピュータで計算してD50の場合の測色値やD65の場合の測色値などを表示することができます。
目で見て検査する場合 照明が必要になる
人が目で見て作業する必要がある場合、D50で作業したければD50の近い照明、D65で作業したければD65に近い照明が必要になります。
D50の照明は手に入りやすい
D50に近い色温度約5000Kの高演色性の照明はある程度手に入りやすいです。
蛍光灯の時代には5000Kの色評価用蛍光管がすぐ購入できました。
照明がLEDに切り替わった現在は蛍光灯時代よりは手に入りにくくなりましたが、印刷会社などの現場で使用することを意識した高演色LED照明が発売されています。
D65の照明はあまりない
D65に近い6500Kの高演色性の照明は5000Kより少ないです。
例えば、高演色LEDの5000Kの製品は既製品が発売されている一方で、同じシリーズの6500Kの製品は受注生産になっていたりします。
D65に近い高演色照明の例
G13の口金の直管LEDランプ
LED専用の機器に取り付けたり、従来の直管蛍光灯用の機器に配線の工事を施した上で取り付けたりできるG13の口金の直管LEDランプがあり、高演色性の製品もあります。
機器などの配線工事は電気工事の有資格者でなければできないので、取り付ける場合はメーカーや店・業者に問い合わせて依頼する必要があります。
エコリカ 直管形LEDランプ 工事専用 高演色タイプ 20形 (昼光色相当) ECL-LD2EGD-L3A2
ECL-LD2EGD-L3A2の主な仕様
- 20形
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 830lm
- 口金 G13
- 消費電力 7.5W
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エコリカ 直管形LEDランプ 工事専用 高演色タイプ 40形 (昼光色相当) ECL-LD4EGD-L3A2
ECL-LD4EGD-L3A2の主な仕様
- 40形
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 18W
メーカーのページ

エコリカ 直管形LEDランプ 工事専用 NICHIA Optisolis™ 超高演色LED 40形 (昼光色相当) ECL-LD4EGD-L3ANN
ECL-LD4EGD-L3ANNの主な仕様
- 40形
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 およそRa97
- 全光束 1800lm
- 口金 G13
- 消費電力 20W
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エコ・トラスト・ジャパン TLSG40-652120HC(受注生産)
40形 6500K(昼光色)TLSG40-652120HC の主な仕様
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 Ra98、特殊演色評価数 Ri90以上
- 全光束 2000lm
- 口金 G13
- 消費電力 21W
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一体型LEDライトなど
現在一般的な器具本体とLED光源が一体になっている照明機器で6500Kの高演色性のものもあります。
東芝ライテック LEDベースライトTENQOOシリーズ LEEM-40203D-A3-SO(セミオーダー)
器具本体とLEDバーの組み合わせを選べる東芝ライテックのTENQOOシリーズという照明機器に昼光色(6500K)の高演色タイプAAA相当 LEDバーもあります。
40形 6500K(昼光色)LEEM-40203D-A3-SO の主な仕様
- 色温度 6500K
- 平均演色評価数 Ra98
- 器具光束 1,800lm
- 消費電力 19.5W
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デスク用照明や持ち運び可能な照明など
山田照明 Z-209PRO
山田照明 Z-209PRO は机用の6500Kの高演色LED照明です。手に入りやすいです。
Z-209PROの主な仕様
- 色温度 6500K(昼光色相当)
- 平均演色評価数 Ra97
- 定格光束 1367lm
- 消費電力 19W
- 調光 ロータリースイッチ(7段階調光)
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セリック LED人工太陽照明灯 SOLAX-iO
セリック SOLAX-iO は持ち運びができる色彩評価用LED人工太陽照明灯です。
SOLAX-iOに色温度6500Kの機種もあります。
参考リンク
色を正しく見るために開発された照明です
参考情報 検査用D65蛍光ランプ
蛍光灯の時代ならD65に近い照明を使いたい場合は東芝の色比較 検査用D65蛍光ランプなどの製品が比較的簡単に手に入りました。
メーカーのページ
参考情報 照明の色温度とモニターの色温度の関係
作業場の照明とモニターは同じ色温度で作業する
照明とモニターの色温度は同じにして作業すると、色の理屈から考えて作業がうまくいきます。
D50の光を基準として使っている印刷関連の作業をする場合は照明・モニターともに色温度約5000Kで作業します。
モニターに写真やレイアウトデータを表示し、色校正やプリンター出力や印刷結果を手元に置いて、モニターと紙への出力結果を比較したりします。
5000Kか6500Kのいずれかの色温度で統一させておくと、どのような条件の作業でもある程度うまくいく
作業場の照明は約5000Kのものを使っていて、普段は印刷関連の作業が多いものの、今回はD65の光を基準として使っている業界のデータを扱う必要が発生したとします。例えば製品の実物が手元にあり、製品の撮影画像のデータの色を実物に合わせたいとします。
この場合、照明を約6500Kのものに付け替えるのが困難なら作業場の約5000Kの照明を使い、モニターも約5000Kのままで作業します。
作業は照明・モニターとも約5000Kの状態で行いましたが、5000Kの環境で正確に作業したなら、色温度約6500Kの照明の下で製品の実物を見て、色調整済みの画像データを色温度約6500Kのモニターで表示してもほぼ同じ色になっています。
ですので、6500Kの環境で作業する場合と5000Kの環境で作業する場合の両方がある人なら、より頻繁に作業する方に合わせておくと良いのではないでしょうか。
作業の多くはオフセット印刷の仕事で、たまにウェブ用の繊維関係の画像調整の仕事もある、というようなケースなら照明もモニターも約5000Kにしておいて全ての仕事を5000Kの環境で進めておけば問題ない場合が多いです。
調整済みのデータをウェブに載せて、ウェブサイトの閲覧者がパソコンやモバイル機器の6500K前後のモニターで表示した場合もほぼ正確に表示されます。
照明を付け替えて作業することも可能
作業に合わせて5000Kの照明と6500Kの照明を切り替えて使いたい場合もあるかもしれません。
一体型ではなくG13の口金のLED照明なら直管LEDランプのみを付け替えられるので、約5000Kの高演色直管LEDランプと約6500Kの高演色直管LEDランプの両方を持っていて、天井の灯具に作業ごとに必要な方のLEDランプを付けて使うことができます。
以上、D65の光が必要な場合の照明の一例でした。
参考記事


