自分のデジカメで写真を撮影し、モニターを見てソフトで現像やレタッチをし、インクジェットプリンターで写真を出力する作業で色を正確に扱うためには各機器のカラーマネジメントを行う必要がありますが、その作業は多少ややこしいです。
以下はデジカメ写真の現像・フォトレタッチからプリンター出力までを安定して行うためのカラーマネジメントの体制作りの一例です。
方法1 最も簡単な方法 全てをsRGBに設定する
モニターやプリンターなどのカラーマネジメントの最も簡単な方法はすべてsRGBにするという方法です。
方法は以下の記事などをご参照ください。
参考記事

方法2 比較的簡単な方法
以下はそれほど精度が高くはありませんが実行するのが簡単な方法です。
1.写真を扱うソフト
写真をレタッチしたり印刷したりするソフトにはカラーマネジメントシステムに対応したソフトを使います。
一例として、以下のソフトはカラーマネジメントシステムに対応しています。
- Adobe® Photoshop®
- Adobe® Photoshop® Elements
- Corel® PaintShop Pro®
- Mac® プレビュー
- Raw現像ソフト
- Epsonの写真印刷用ソフトなど
2.部屋の照明
作業をする部屋の照明が昼白色か昼光色か確認します。
たいていは照明器具の説明書やカタログやメーカーの公式ページの仕様欄などに書いてあります。
昼白色なら色温度が約5000K前後、昼光色なら色温度が約6500K前後の照明の光で作業していることになります。
色温度を調整できる照明を使っているなら普段作業する時にどのくらいの色温度にしているか確認します。(約5000Kくらい、約5500Kくらい、約6500Kくらい、など)
3.モニター
モニターの色温度と明るさを自分の作業環境に合わせて調整します。
色合いやコントラストなど
モニターの色合いやコントラストは初期設定のままにしてみます。
色温度
モニターに色温度の調整機能があれば、部屋の照明の色温度と近い色温度に調整します。
輝度(明るさ)
モニターに真っ白を表示します。(例えばデスクトップの壁紙の設定欄でただの真っ白に設定する、ワープロソフトを起動して真っ白なドキュメントを表示する、など)
モニターの前に座って写真をプリンター出力するときに使う用紙を机に置いたり手に持ったりして見ます。
モニターに表示した真っ白な部分と手元のプリンター用紙の明るさが近くなるよう、モニターの輝度・明るさ調整ボタンなどを操作して調整します。

真っ白な画面を表示したディスプレイの明るさを、白い紙の明るさに近づける。
ディスプレイプロファイル
たいていの場合、OSの環境設定などのディスプレイ関連の設定欄にディスプレイプロファイルを設定する欄があります。
外付けの液晶ディスプレイを使っているならディスプレイのドライバーソフトなどをインストールしたときにディスプレイプロファイルもインストールされて、OSのディスプレイプロファイルの設定欄でその液晶ディスプレイ用のディスプレイプロファイルが設定されているかもしれません。そのように設定されているならそのままにしておきます。
ノートパソコンなどの場合は、おそらく初期状態で何らかのディスプレイプロファイルが設定されているので、そのままにしておきます。
そのように、ディスプレイプロファイルの設定欄をできるだけ初期状態の設定にしてみます。
自分で適当に工夫して作ったディスプレイプロファイルなどを設定すると表示がおかしくなるかもしれません。
4.プリンター
プリンター出力用のカラープロファイル(プリンタープロファイルと呼んだりする)を用意します。
プリンターメーカー純正紙を使う場合
プリンターメーカー純正紙を使うためのプリンタープロファイルはたいていプリンターに付属しています。
プリンタードライバーをインストールするときにプリンタープロファイルもパソコンにコピーされます。
例えば、EPSON® SC-PX1Vのプリンタードライバーをパソコンにインストールすると、EPSON 写真用紙クリスピア<高光沢>やEPSON 写真用紙<絹目調>やEPSON Velvet Fine Art PaperなどのEPSONのプリンター用紙をSC-PX1Vで使うためのプリンタープロファイルが一通りパソコンにコピーされます。
そのように自分で何もしなくてもすでにプリンタープロファイルがインストールされているのでプリンターメーカー純正紙を使うと簡単です。
プリンターメーカー純正紙以外の高級インクジェット紙を使う場合
ハーネミューレやイルフォードなどの高級インクジェット用紙の場合、用紙のメーカーのサイトでプリンタープロファイルをダウンロードできる場合があります。使用規約へ同意した上でダウンロードするようになっていたりします。
自分でダウンロードして、自分でパソコンのカラープロファイル保存用のフォルダにコピーしたりする必要があるので少し手間がかかります。
用紙ブランドの公式サイトで自分のプリンター用のプリンタープロファイルが配布されているか確認してみます。公式サイトのサポートのページなどにカラープロファイルのダウンロードの案内があります。
EPSONやHPなどの主なプリンターメーカーの最近の主な機種用のプリンタープロファイルが手に入るかもしれません。
古い機種などはプリンタープロファイルが配布されていないかもしれません。
参考記事





プリンタープロファイルが提供されていないプリンター用紙を使う場合
プリンターメーカー純正紙以外の用紙で、なおかつ用紙の製造販売メーカーからもプリンタープロファイルが配布されていない場合、プリンターメーカー純正紙のプリンタープロファイルを代用したりすることになります。
用紙の説明欄に主なプリンターメーカーのプリンターで印刷するときの設定方法が載っているかもしれません。その説明に従って設定し、プリンタードライバーの色管理に任せて印刷したりします。
このような方法では正確なカラーマネジメントは困難です。ある程度まともな色で印刷できれば良しとするしかありません。
プリンターメーカー純正紙以外の用紙への印刷方法は以下の記事などをご参照ください。
参考記事

方法3 高い精度でカラーマネジメントを行う方法
1.写真を扱うソフト
写真をレタッチしたり印刷したりするソフトにはカラーマネジメントシステムに対応したソフトを使います。
一例として、以下のソフトはカラーマネジメントシステムに対応しています。
- Adobe® Photoshop®
- Adobe® Photoshop® Elements
- Corel® PaintShop Pro®
- Mac® プレビュー
- Raw現像ソフト
- Epsonの写真印刷用ソフトなど
2.照明
作業場の照明はできるだけ高演色性のものを使います。
照明機器の仕様欄に平均演色評価数Raなどの数値が載っています。
Ra90以上あるくらいの機器ならある程度演色性が高いです。
(演色性を示す指標はRa以外にもありますが、とりあえずRaの数値で選んでおけばたいていは問題ありません。)
照明の色温度については、自分の作業に適した色温度のものを使います。
印刷業界の基準に合わせたければ約5000Kくらいのもの、その他の業界やsRGBなどの色温度に合わせたければ約6500Kくらいのものを使うなど、自分で考えて決めます。
参考記事

3.モニター
モニターはキャリブレーションをして使います。
普通の液晶モニターをモニターキャリブレーションツールを使ってキャリブレーションするか、カラーマネジメントモニターをキャリブレーションして使います。
キャリブレーション目標として、白色点の色温度は作業場の照明と合わせます。作業場で5000Kの高演色照明を使っていればモニターの色温度も5000Kにします。作業場で6500Kの高演色照明を使っていればモニターの色温度も6500Kにします。
モニターの輝度の目標は扱う写真の用途などに合わせて考えます。プリント用の写真を扱うなら写真を飾る場所の明るさや、ウェブ用の写真なら写真を表示するモニターの明るさなどを考慮して、80cd/m2や100cd/m2などキリの良い数値に決めたりします。
モニターキャリブレーションツールの例
カラーマネジメントモニターの例
参考記事




4.プリンター
プリンターをしばらく使っていれば特性が少しは変わってくるので、高い精度でプリンターのカラーマネジメントを行うためにプリンタープロファイルを自分で作ります。
プリンタープロファイル作成ツールを使ってプリンタープロファイルを作成できます。
プリンター出力に使うプリンター用紙を用意し、そのプリンター用紙にプリンタープロファイル作成ツールのソフトの指示に従ってテストチャートを印刷し、ソフトの指示に従ってプリンタープロファイル作成ツールの測色器でテストチャートを測定し、その結果からプリンタープロファイルを作成して保存します。
プリンタープロファイル作成ツールの例
参考記事


プリンター出力作業
プリンター付属のプリンタープロファイルや用紙ブランドの公式サイトでダウンロードしたプロファイルや自作したプリンタープロファイルを使う場合は、アプリケーションソフトの印刷画面などで正しくカラーマネジメントの設定をして印刷します。
印刷するときにプリンタープロファイルの設定などを間違えるとおかしな色で印刷されます。
多くの場合はアプリケーションソフトの印刷画面でプリンタープロファイルを指定して印刷します。
主なアプリケーションソフトから印刷するときの設定方法は以下の記事などをご参照ください。
参考記事












以上、デジカメ写真の現像・フォトレタッチからプリンター出力までを安定して行うためのカラーマネジメントの体制作りの一例でした。