価格と機能が手頃なモニターキャリブレーションツールにi1Display Studioがあります。
ここでは、i1Display Studioの使い方、モニターをキャリブレーションする実際の手順の一例をご紹介します。
i1 Display Studioを購入する
X-Rite®「i1Display Studio」を購入します。
ハードウェアキャリブレーションができるカラーマネジメントモニターは結構高価です。写真や映像を専門に扱う場合でなければ、高すぎるかもしれません。
一方、「i1Display Studio」はカラーマネジメントモニターよりもはるかに低価格です。
価格と機能のバランスが手頃なツールです。
i1 Display Studio 販売終了
X-Riteの写真・映像関連製品の販売がキャリブライト社に移行した結果、i1 Display Studioは販売終了になりました。
Calibrite社 ColorChecker Displayがi1 Display Studioの後継機です。
メーカーのページ
参考記事
i1Display Studio専用キャリブレーションソフトをインストールする
「i1Display Studio」専用のキャリブレーションソフトをインストールします。
以前はX−Rite®のウェブサイトからも「i1Display Studio」専用ソフトの最新版がダウンロードできましたが、現在は以下のリンクに進むとCalibriteのサイトに転送されてしまいます。
i1Display Studioのページ
おそらくi1Display Studioの常駐ソフトも同時にインストールされる
「i1Display Studio」の専用キャリブレーションソフトをインストールすると、前回のモニターキャリブレーションからの経過日数を管理したり、環境光を監視したりするための常駐ソフトもおそらく同時にインストールされます。
i1Display Studioの説明書は
「i1Display Studio」のパッケージには、それほど詳しい説明書は入っていないかもしれません。
i1Display Studioの専用キャリブレーションソフトでキャリブレーション作業を進めると、ヘルプの表示欄があり、そのヘルプにそこそこ詳しい説明が書いてあります。
ソフト起動、「i1Display Studio」の接続
専用キャリブレーションソフトを起動します。
「i1Display Studio」をパソコンに接続します。
ソフトの起動と機器の接続はどちらが先が良いのかは、分かりません。
私が使う限りではどちらが先でも特に支障ありません。
メニューの「ヘルプ > 登録」からユーザー登録ができます。
モニターキャリブレーション作業の手順
モニターキャリブレーションを行ってみます。
1.キャリブレーション作業の開始
トップ画面にi1Studio・ColorMunki Photoのイラストのボタンと、i1Display Studio・ColorMunki Displayのイラストのボタンがあるので、i1Display Studio・ColorMunki Displayのイラストのボタンをクリックします。
すると左の欄のメニューがi1Display Studio・ColorMunki Display用の内容に変わります。
左のメニューの[ディスプレイのキャリブレーション > ディスプレイ]に進みます。
2.ディスプレイの設定(キャリブレーション目標の設定)
ディスプレイの設定の画面で、キャリブレーション目標を設定します。
ディスプレイの白色点(真っ白な部分)の色や、ディスプレイの明るさなどは、何が正しいということはありません。ディスプレイの自由です。
そこで、ディスプレイを使う人が何らかの色、明るさなどを目標として決めて、キャリブレーションします。
たいていは一般的に良く使う基準などを目標に決めて、キャリブレーションします。
モニターを選択する
パソコンに接続されているモニターが表示されているので、キャリブレーションしたいモニターを選択します。
光源タイプはたいてい自動的に適切なものが選択されています。
白色点、輝度、ガンマの目標設定
次にディスプレイの白色点(真っ白な部分)の色、白色点の輝度、ガンマの目標を決めます。
方法1 「写真」を選ぶ場合
プリセット「写真」を選択すると、各項目が以下の数値に設定されます。
- 白色点:CIEイルミナントD65
- 輝度:120cd/m2
- ガンマ:2.20
「白色点:CIEイルミナントD65」は、色温度およそ6500Kの昼光色の照明の部屋で現像・レタッチ作業をしたり、印刷した写真を色温度およそ6500Kの昼光色の照明の部屋で鑑賞したり、現像・レタッチして完成した写真を色温度およそ6500Kの別のモニターに表示したい場合などに適しています。
「輝度:120cd/m2」は、ある程度明るい部屋で現像・レタッチ作業をしたり、印刷した写真をある程度明るい部屋で観賞したり、現像・レタッチして完成した写真を輝度120cd/m2くらいの別のモニターに表示したい場合などに適しています。
ガンマについては特殊な事情がなければ「ガンマ:2.20」で問題ありません。
方法2 5000Kに設定する場合
よく、写真や印刷関連の作業で色温度5000Kが基準として使われているという話を聞くでしょう。
そこで、一例として、印刷業界の推奨規格などでよく使われている色温度およそ5000Kの環境にしてみます。
参考記事
「カスタム」を選択すると各数値を自由に設定できます。
「カスタム」を選択します。
各数値を以下のように設定してみます。
- 白色点:CIEイルミナントD50
- 輝度:例えば、100cd/m2
- ガンマ:2.20
「白色点:CIEイルミナントD50」を選択すると、モニターの色温度の目標値がおよそ5000Kになります。
色温度およそ5000Kの昼白色の照明の部屋で現像・レタッチ作業をしたり、印刷した写真を色温度およそ5000Kの昼白色の照明の部屋で観賞したり、現像・レタッチして完成した写真を色温度およそ5000Kの別のモニターに表示したい場合などに適しています。
「輝度:100cd/m2」に設定すると、少し抑えた照明の部屋で現像・レタッチ作業をしたり、印刷した写真を少し抑えた照明の部屋で鑑賞したり、現像・レタッチして完成した写真を輝度100cd/m2くらいの別のモニターに表示したい場合などに適しています。
ガンマについては特殊な事情がなければ「ガンマ:2.20」で問題ありません。
方法3 動画用の各プリセットを選ぶ場合
「ビデオ」を選ぶと、映像関連の作業に適した複数のプリセットが選択できます。
白色点、輝度、ガンマ はどのように設定するべきか
白色点
白色点は、パソコンで仕上げて完成した写真の最終出力の白色点の色に合わせるとカラーマッチングしやすいです。
完成した写真を最終的に印刷するなら、鑑賞する部屋で白い印刷用紙を見たときの用紙の色に合わせます。
完成した写真を最終的にモニターに表示するなら、表示するモニターの白色点の色に合わせます。
しかし、皆が自分の作業の最終出力の白色点の色に合わせると、その時々、また人によってまちまちの白色点に設定することになります。
そうなると画像データを共同で扱ったり、複数の人に渡したりするとき、人によって環境がまちまちでは支障があります。
そこで、たいていはD50(およそ5000K)かD65(およそ6500K)など、広く使われている基準に合わせます。
参考記事
輝度
「白色点の輝度」は、パソコンで作成して印刷した写真などを見るときの写真の明るさと合わせるとカラーマッチングしやすいです。
プリンターで印刷したり店のプリントサービスでプリントしたりする目的で写真などを扱う場合は、たいていは80〜120cd/m2くらいの範囲で設定することが多いです。
このくらいに設定すると、普通の部屋で写真を見たときの明るさと近い明るさになります。
WEB用の画像を扱うのに無難な設定にしたい場合、100〜160cd/m2くらいの範囲で設定すると良いでしょう。
WEB用の画像を扱う場合、自分のパソコン画面もWEBサイトを閲覧する人のディスプレイの明るさに合わせると作業がうまくいきます。
パソコンやスマホの画面は、結構明るくして使っている人が多いようなので、私の経験上それに合わせて明るめに100〜160cd/m2くらいにすると無難です。
参考記事
ガンマ
現在のパソコンや周辺機器で一般的に使われいるカラーマネジメントシステムでは、特別な事情がない限り、WindowsかMacかに関わらずガンマは2.2に設定しておけば問題ありません。
参考記事
キャリブレーション目標の設定が終わったら、次へ進みます。
フレア補正
「フレア補正」を使うかどうかは自由です。
私の経験上、使う場合と使わない場合でそれほど大きな違いはありません。
次へ進みます。
3.カラーパッチの測定
「カラーパッチの測定」の画面でモニターの表示色を測定します。
「ハードウェア設定を表示」の設定欄
「ハードウェア設定を表示」の欄で、モニター本体に付いている調整機能を自動で操作するか、手動で操作するかを選びます。
キャリブレーションするモニターが「自動ディスプレイコントロール」が可能なら、「自動ディスプレイコントロール」にチェックを入れます。
「自動ディスプレイコントロール」に対応していないなら、「ブライトネス、コントラスト、RGBゲインを手動で調整」にチェックを入れます。
どちらか分からなければ、とりあえず「自動ディスプレイコントロール」にチェックを入れてキャリブレーションしてみて、それでうまく行かなければもう一度「ブライトネス、コントラスト、RGBゲインを手動で調整」にチェックを入れてキャリブレーションしなおしてみたりすると良いでしょう。
モニターキャリブレーション作業はそれほど時間がかからないので、気軽にやり直しできます。
測定
「測定手順を開始」をクリックします。
画面の指示に従って測色器をセットし、測定を進めます。
場合によっては、モニター本体の調整ボタンを操作して輝度などを調整するよう指示が表示されます。
例えば輝度について手動の調整の指示が出たら、モニター本体の輝度調整ボタンを操作して、モニターに表示されたインジケーターと測定値を目安にして目標輝度に近づくよう調整します。
調整したら「次へ」をクリックし、測定を続行します。
測定が完了します。
「次へ」をクリックします。
測定が完了して元の画面に戻ったら、「次へ」をクリックして進みます。
4.ディスプレイプロファイルの作成、保存
測定値からディスプレイのICCプロファイルを作成し、保存します。
プロファイル名
「プロファイル名」の欄で、プロファイル名を入力します。
英数字で、モニターの名前、輝度、白色点の色、日付、などを付けておくと便利です。
プロファイルのバージョン
ICCプロファイルのバージョンは「バージョン4」でも「バージョン2」でも多くの場合問題ありませんが、「バージョン4」にした場合はソフトによってはプロファイル選択欄でプロファイル名が表示されない、などの問題が起こる場合もあります。
念のために「バージョン2」にしておいても良いでしょう。
プロファイルのリマインダー機能の設定
i1Display Studioの専用キャリブレーションソフトをインストールすると、i1StudioTrayという常駐ソフトもインストールされます。
この常駐ソフトによって前回のキャリブレーション作業からの経過日数などを管理できます。
一定の期間が過ぎたときに、そろそろモニターキャリブレーションをするよう表示を出したければ、「プロファイルのリマインダー機能」の欄に期間を設定します。
自分で適当な時期にキャリブレーションするなら「なし」を選択します。
経験上、一度キャリブレーションしたら1ヶ月程度ではほとんど変化ありません。
プロファイルを保存
「プロファイルを保存」をクリックすると、ディスプレイプロファイルが作成され、パソコンのOSのICCプロファイル用のフォルダに保存されます。
適用前/適用後 比較
キャリブレーションしない状態、キャリブレーションした状態を比較できます。
軽く参考までに確認します。
ホームをクリックして終了します。
5.OSのディスプレイプロファイルの設定を確認
OSのディスプレイプロファイルの設定欄で、今作成したディスプレイプロファイルが選択されていることを確認します。
参考 ソフトウェアキャリブレーションの結果
i1Display Studioではありませんが、参考までにMacBookAirのディスプレイを「ColorMunki Display」でソフトウェアキャリブレーションした結果と、EIZO®のカラーマネジメントモニターCS230で同じ調整目標でハードウェアキャリブレーションした結果を比較したものを以下にあげます。
以下の写真では二つのディスプレイともAdobe® Photoshop®で開いた確認用の画像を表示しています。
少し差はありますが、画像やグラフィックを扱う一般的な作業なら十分支障ない精度でキャリブレーションできています。
キャリブレーション後の注意点
OSやモニターの調整機能で明るさを変えない
モニターキャリブレーションを行った結果、モニターの輝度はキャリブレーション目標に設定した輝度に近い状態に調整されています。
しかし、もしOSのモニターの明るさの調整機能やモニター本体の明るさ調整ボタンなどで明るさを変更すると、輝度が変わってしまいます。
モニターキャリブレーション作業で調整した輝度を維持したい場合は、OSやモニター本体の機能で明るさを変更しないようにします。
OSやモニターの調整機能で色合いなども変えない
明るさに限らず、色合いやコントラストなどについても同じです。
キャリブレーション後にOSやモニター本体の調整機能で色合いやコントラストなどを調整してしまうと、キャリブレーション作業で調整した結果が変更されてしまいます。
キャリブレーション結果を維持したい場合は、OSのモニター調整機能やモニター本体の調整機能を操作しないようにしておきます。
もし調整してしまったら再度キャリブレーションを行う
もしキャリブレーション後にOSやモニター本体の調整機能でモニター表示特性を変更してしまっても心配はいりません。
もう一度モニターキャリブレーション作業を行えば済みます。
モニターキャリブレーションの注意点
モニターを明るく設定しすぎると暗い写真になるので、注意
モニター輝度を高く設定しすぎると、完成した写真が暗くなるので注意が必要です。
最終的にプリンターで写真を印刷する予定だとします。
印刷する用紙を部屋で見たとき、下図のように見えるとします。
2台のモニターがあり、白色点の輝度を一方は100cd/m2、もう一方は160cd/m2になるようキャリブレーションします。
100cd/m2のモニターの真っ白な部分は部屋で見た用紙と同じくらいの明るさに見えていて、一方160cd/m2のモニターの真っ白な部分は部屋で見た用紙よりかなり明るく見えているとします。
同じ写真を2台のモニターで表示してみます。
当然ながら、輝度100cd/m2のモニターより160cd/m2のモニターの方が明るく見えます。
この写真を正しくカラーマネジメントしてプリンターで印刷すると、100cd/m2のモニターの表示と近い印刷結果になります。
もともと、部屋で見た用紙の明るさと100cd/m2のモニターの真っ白な部分が同じくらいの明るさに見えていたからです。
一方、160cd/m2のモニターはもともと部屋で見た用紙の明るさよりかなり明るく調整されているので、印刷結果よりモニター表示の方が明るくなっています。
次に、160cd/m2のモニターの表示を見ながら、160cd/m2のモニターでちょうど良い見た目になるよう写真の明るさなどを調整して仕上げます。
仕上げた写真を100cd/m2のモニターで表示すると、当然ながら160cd/m2のモニターで見た状態より暗く見えます。
仕上げた写真を印刷すると、印刷結果はとても暗くなります。
もともと160cd/m2のモニターの真っ白な部分の明るさに比べて、部屋で見た用紙の明るさの方がかなり暗いからです。
このように、部屋の明るさよりモニターの明るさをかなり明るく調整してしまうと、仕上げた写真は暗い仕上がりになってしまいます。
国際規格などをあまり気にしない方が良い
メーカーによっては、キャリブレーションソフトのモニター輝度の初期値が国際規格に合わせて160cd/m2くらいになっている例もあるようです。
しかし、160cd/m2は一般的な部屋や事務所の明るさと比べてかなり明るいです。
そのため、輝度目標160cd/m2などでモニターをキャリブレーションし、写真を現像、レタッチしてプリンターで印刷すると、とても暗い写真になってしまう可能性が高いです。
国際規格はあまり気にせず、自分の部屋や写真を展示する場所の明るさに合わせてモニターキャリブレーションをした方が良いでしょう。
私の経験上、一般的な部屋や事務所で見た白い用紙の明るさは、輝度80〜120cd/m2くらいのモニターの白色点と近い明るさの場合が多いです。
その他の参考記事
モニターキャリブレーションは、理屈を考えると結構ややこしいものです。
以下のカテゴリーの記事などをご参照ください。
以上、i1Display Studioでモニターをキャリブレーションする実際の手順をご紹介しました。
参考記事
- i1Display Studioの使い方に関する記事 一覧
- 初心者の方へ ディスプレイのキャリブレーションの方法
- ディスプレイのカラーマネジメントをするために必要なツール
- 【旧製品】i1 Display Studioとはモニターを正確に調整する初級者向けツール
- i1Display Studioで部屋の照明を測定しモニターキャリブレーションする方法
i1Display Studio