CMYKで作った同じ印刷用のデータを同じ印刷機で印刷する場合でも、使用する用紙が異なれば印刷結果も異なります。
ここではコート紙と上質紙に印刷する場合でどのくらい色が異なるか、おおまかな雰囲気をみてみます。
用紙が異なれば、インクののり方も印刷の仕方も異なる
用紙が異なるとインクののり方が異なる
例えば緑色の油性マーカーで紙に色を塗った時、画用紙に塗ったときと、カレンダーの裏面に塗った時と、半紙に塗った時なら、同じ油性マーカーで塗っていても色の感じが多少異なります。
用紙が変われば印刷の仕方も変える
用紙が異なれば印刷の仕方も少し異なります。
緑色の油性マーカーでカレンダーの裏面に色を塗るなら、ツルツルすべる紙にちょうど良い手加減で塗るでしょう。
半紙に塗るとしたら、インクが染みる半紙にちょうど良い手加減で塗るでしょう。
そのように紙が異なれば塗り方も多少変わります。
それと全く同じではありませんが、オフセット印刷も紙の種類によって印刷の仕方を多少変えます。
コート紙に枚葉オフセット印刷をするなら、たいていは175線くらいの網点の版を出力し、印刷機ではベタ部分の濃度やドットゲインがコート紙を使う場合の基準として決めてある数値になるよう調整して印刷します。
単純な雰囲気で言うと、表面をコーティングしていない上質紙はコーティングしているコート紙よりインクが滲みます。
上質紙に枚葉オフセット印刷をするときにコート紙と全く同じように印刷した場合、コート紙ではきれいに印刷できた文字が上質紙では潰れてしまったりします。
そこで、上質紙に枚葉オフセット印刷をするなら、133線前後くらいの網点(175線より点の間隔が広い)の版を出力し、印刷機ではベタ部分の濃度やドットゲインが上質紙を使う場合の基準として決めてある数値になるよう調整して印刷します。
その結果、印刷用に作った全く同じCMYKのPDFをオフセット印刷したとしても、結果は異なってきます。
コート紙と上質紙のオフセット印刷の結果の違いの雰囲気
以下の表は、日本のコート紙のオフセット印刷の特性の一例を示したCMYKカラープロファイル「JapanColor2001Coated」と、日本の上質紙のオフセット印刷の特性の一例を示した「JapanColor2001Uncoated」それぞれで同じCMYK値を印刷した場合の色を比較したものです。
オフセット印刷の色域はsRGBの色域を超えている部分もありますが、以下の表ではCMYKの色をsRGBに変換しているので実際のCMYKと全く同じわけではありません。あくまでコート紙と上質紙で色がどのくらい異なるものかの雰囲気とお考えください。
JapanColor2001Uncoated | JapanColor2001Coated |
---|---|
50,0,0,0 | 50,0,0,0 |
100,0,0,0 | 100,0,0,0 |
0,50,0,0 | 0,50,0,0 |
0,100,0,0 | 0,100,0,0 |
0,0,50,0 | 0,0,50,0 |
0,0,100,0 | 0,0,100,0 |
0,0,0,50 | 0,0,0,50 |
0,0,0,100 | 0,0,0,100 |
50,50,0,0 | 50,50,0,0 |
50,100,0,0 | 50,100,0,0 |
50,0,0,50 | 50,0,0,50 |
100,50,0,0 | 100,50,0,0 |
100,100,0,0 | 100,100,0,0 |
50,0,50,0 | 50,0,50,0 |
50,0,100,0 | 50,0,100,0 |
100,0,50,0 | 100,0,50,0 |
100,0,100,0 | 100,0,100,0 |
100,0,0,50 | 100,0,0,50 |
100,50,50,0 | 100,50,50,0 |
100,50,100,0 | 100,50,100,0 |
0,50,50,0 | 0,50,50,0 |
0,50,100,0 | 0,50,100,0 |
0,100,50,0 | 0,100,50,0 |
0,100,100,0 | 0,100,100,0 |
0,50,0,50 | 0,50,0,50 |
0,100,0,50 | 0,100,0,50 |
50,100,50,0 | 50,100,50,0 |
50,100,100,0 | 50,100,100,0 |
0,0,50,50 | 0,0,50,50 |
50,50,100,0 | 50,50,100,0 |
コート紙でも上質紙でもできるだけ同じ印刷結果にするため、CMYKへの変換の仕方を変える
印刷物に掲載する人物の写真を仕上げるとしたら、使う用紙にかかわらずモニターをみてちょうど良い色や明るさに仕上げるでしょう。
そしてちょうど良く作り上げた写真を、コート紙を使う場合でも上質紙を使う場合でも同じようにちょうど良い色や明るさで印刷したいでしょう。
全く同じCMYKのデータを使えば、上記の通り使う用紙によって色や明るさは変わってしまいます。
そこで、使う用紙によってCMYKへの変換の仕方を変えます。
コート紙にJapanColor2001Coatedに近い印刷条件で印刷するなら、RGBで仕上げた写真をJapanColor2001Coated.iccを使ってCMYKにプロファイル変換します。
コート紙にJapanColor2011Coatedに近い印刷条件で印刷するなら、RGBで仕上げた写真をJapanColor2011Coated.iccを使ってCMYKにプロファイル変換します。
上質紙にJapanColor2001Uncoatedに近い印刷条件で印刷するなら、RGBで仕上げた写真をJapanColor2001Uncoated.iccを使ってCMYKにプロファイル変換します。
コート紙に自分の会社で決めてある印刷基準で印刷するなら、RGBで仕上げた写真を自分の会社専用に作ってある自分の会社の印刷基準を示したICCプロファイルなどを使ってCMYKにプロファイル変換します。
この結果、使う用紙が変わっても写真はちょうど良く仕上げた通りに印刷できます。
印刷業界以外の人はCMYKプロファイルまで考えない方が無難な場合が多い
CMYKで作った完全データ持ち込みで印刷を外注する場合でも、データを作る人が印刷業界の人でなければCMYKプロファイルを選ぶのは困難です。
やるとしたら依頼先の印刷所がジャパンカラーなどの基準で印刷するのか自社基準で印刷するのかの確認も必要になります。
そのため、おそらくたいていの印刷会社は、印刷業界でない顧客から持ち込まれるデータはおそらくJapan Color 2001 Coatedあたりを使ってプロファイル変換されたデータだと推測して処理しているのではないかと思われます。
印刷に詳しくない人がAdobeのグラフィックソフトでカラー設定を「プリプレス – 日本2」などに設定して、プロファイル変換にどのカラープロファイルを使うか特に考えずに印刷向けのPDFを書き出せば、プロファイルにはJapan Color 2001 Coatedが使われる、などの理由です。
以上、コート紙と上質紙に印刷する場合でどのくらい色が異なるか、おおまかな雰囲気をみてみました。
参考記事