AdobeRGBをほぼカバーし、A3ノビ実寸とツールパレットを並べて表示でき、解像度がUHDの27型カラーマネジメントモニターにEIZO®のColorEdge® CS2740があります。
このディスプレイはフォトレタッチ作業をするにも十分で、動画編集などフォトレタッチ以外の分野にも向いています。
ここでは、フォトレタッチ用途の側面から、CS2740の主な仕様についてみてみます。
機器などを買うときの参考情報
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
当然ながら、機器を使用する私たちユーザーもそれら国際問題の当事者の一人です。
仕事や創作活動などを意義あるものにするため、物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選びましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料を使っていないかどうか
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物は武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり、児童労働につながっているものもあるということです。
参考
華井和代「紛争下の性暴力の構造と日本の取り組み」ーデニ・ムクウェゲ医師来日講演会:平和・正義の実現と女性の人権
デニ・ムクウェゲ「コンゴ東部における性暴力と紛争鉱物(日本語字幕)」ーデニ・ムクウェゲ医師講演会2016
【アムネスティ】スマートフォンに隠された真実:あなたのケータイ、「児童労働」につながっていませんか?(日本語字幕付※設定をONにしてください)|アムネスティ日本
参考リンク
参考書籍
「人新生の「資本論」」で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることが説明されていました。
電子機器などを購入する場合、紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうかなど、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかを確認すると良いでしょう。
ウェブサイト等で原料調達に関する取り組みについて記載し、調査結果などを公開しているメーカーもあります。
使用後の製品の回収について説明されているかどうか
物が壊れたら、パソコンやPCモニター等ならPCリサイクルなどに出す、その他の電子機器なら小型家電リサイクルなどに出す、というように法律に従って回収に出す必要があります。
メーカーによっては使用後の機器の回収方法を分かりやすく説明したり、分かりやすい回収申し込みフォームを用意したりしています。
一方、使用後の機器の回収について丁寧とは言えない説明しか載せていないメーカーもあります。
きちんと回収して持続可能な事業活動をしようとしているまじめなメーカーを選びましょう。
CS2740はAdobeRGBカバー率99%、解像度UHD、27型のカラーマネジメントモニター
CS2740は色域がAdobeRGBカバー率99%、高解像度のUHD、画面が27型の高解像度カラーマネジメントモニターです。
CS2740
モニターは中古市場にも多数あるので、まずは良い中古品を探すと良いでしょう。新品を購入するよりも環境負荷を低く抑えられます。
ハードオフ
キャリブレーションを行うために必要な別売りの測色器 EX4
CS2740と測色器EX4のセット
CS2740の表示色域 AdobeRGBカバー率99%
カラーマネジメントモニターを購入する方が一番気になると思われる色域については、AdobeRGBカバー率99%ということです。
フォトレタッチ作業に十分です。
補足説明 表示可能な色域がAdobeRGBをカバーしていないとAdobeRGBのデータを扱えないわけではない
ディスプレイの表示可能な色域がAdobeRGBをカバーしていないと、AdobeRGBのデータを扱えない、というわけではありません。
カラーマネジメントの仕組みは、AdobeRGBの色域を持ったデータをsRGBしか表示できないディスプレイでも扱えるようになっています。
参考記事
ウェブサイトを見るときなど、AdobeRGB色域で支障がある時は「sRGBモード」にすると良い
一般的なsRGBくらいのディスプレイで自然に表示されるものが、広色域のディスプレイではかなり彩度が高く表示されたりすることがあり得ます。
例えば、カラーマネジメントに対応していないウェブブラウザを使ってウェブサイトを閲覧するときなどです。
そのような場合は、自分のディスプレイの色域が他の多くの人のディスプレイより広いために逆に使いにくい、ということになります。
そこで、モニターの表示設定にある「sRGBモード」などを使って表示することで解決できます。
CS2740は画面の解像度が高解像度のUHD
CS2740は画面の解像度が4K UHDとなっています。
画素密度164ppi、解像度UHD(3840×2160ピクセル)の表示が行えます。
同じ27型のカラーマネジメントモニターでも、CS2731とCS2740の大きな違いはこの解像度です。
CS2731は画素密度109ppi、解像度2560×1440ピクセルです。
解像度が高いため、画面全体を使えば4Kコンテンツを等倍で確認したりでき、最近の高解像度の動画のデータを扱う用途にも使えます。
フォトレタッチならUHDの高解像度でなくても足りる場合が多い
フォトレタッチの用途なら、画素密度164ppi、UHD(3840×2160ピクセル)という高解像度のモニターでなくても、CS2410など一般的な解像度のモニターで足りる場合が多いです。
写真の最終出力がプリンター出力の場合
最終的にプリンターで出力して作品とする写真のレタッチ作業をするとします。
この場合、最終的な写真の品質は、写真のデータとプリンターの性能によります。
フルHDのモニターでレタッチしても、UHDのモニターでレタッチしても、仕上げた写真のデータが同じ品質で、同じプリンターで印刷するなら、同じ品質の写真が出来上がります。
モニター表示はあくまで画像処理中の画像データを確認するためのもので、レタッチ作業がしやすければそれで足りるということになります。
どのような方式のプリンターであれ、現在のプリンターはかなり高精細な写真出力が可能なので、UHDなどの高解像度モニターの方が精密に画像を確認できて作業しやすいという人もいるでしょう。
一方、一般的なフルHDくらいのモニターで写真を表示できれば作業のしやすさに問題はない、という人もいるでしょう。
モニター解像度はお好み次第です。
ウェブサイト掲載用の写真をレタッチする場合
ウェブサイト掲載用の写真をレタッチする場合、最終出力はウェブサイトを閲覧する人が使用している端末のモニター表示ということになります。
たいていの場合ウェブサイトは不特定多数の人が閲覧するもので、使用されるモニターも様々でしょう。
パソコンで閲覧する場合、UHDの高解像度モニターで閲覧する人は少なく、多くの人がフルHDくらいのPCモニターあたりで閲覧するでしょう。
一方、スマホなどのモバイル端末の場合、最近のディスプレイは画素密度が356ppiや458ppiなど、高精細な製品が出ています。
よって、パソコンでの閲覧を想定してレタッチするなら、UHDの高解像度モニターを使用しなくても、最終的に写真が表示される多くの環境に少しは近いと思われる一般的なフルHDくらいのモニターで足りるかもしれません。
一方、スマホなどのモバイル端末の高い画素密度のディスプレイで閲覧されることを考えて、レタッチに使用するモニターもできるだけ画素密度の高いモニターの方が作業しやすいと思う人もいるかもしれません。
画素密度が高いモニターを使っているなら、低い解像度のモニターを再現したければ設定で解像度を下げれば済みます。
画素密度が高くても低くても写真は正確に表示できるので、モバイル機器で閲覧される写真であっても、最終的に表示されるディスプレイに近い画素密度で表示しなくてもレタッチできるという人もいるでしょう。
このように、ウェブサイト掲載用の写真のレタッチ作業なら、モニター解像度はお好み次第ということになります。
高解像度の表示装置に表示する写真をレタッチする場合
業務の内容によっては、何か高解像度の表示装置に表示するための写真をレタッチする、というような場合もあるかもしれません。
そのような場合は最終出力は高解像度の表示装置の表示ということになります。
よって、最終出力と近い状態を再現できるUHDなどの高解像度モニターを使用すると作業はしやすいでしょう。
動画を編集するなら高解像度モニターが向いているようである
動画の場合、最終的にはたいてい液晶モニターなどに表示して鑑賞するでしょう。
よって、動画の場合、画像データの最終出力に相当するものはテレビなど映像鑑賞用のモニターの表示ということになります。
モニターに表示するものが最終的な状態であり、最近は4Kテレビやその上のものもあったりするので、、動画編集作業は最終的な表示に近い表示をできるようUHDなど高解像度のモニターを使った方がやりやすいようです。
当ブログ運営者の私は業務で静止画しか扱っていないので、動画編集についてはあまり詳しくはわかりません。
専用キャリブレーション用ソフトは「ColorNavigator7」
キャリブレーション用ソフトウェアは「ColorNavigator7」を使います。
「ColorNavigator7」を使うことで、ハードウェア・キャリブレーションができます。
ハードウェア・キャリブレーションとは
ハードウェア・キャリブレーションは、パソコンから送られてくる映像の信号を変更せずに、ディスプレイの内部で白色点・ガンマ・輝度を調整する方法です。映像の信号を減らさずに調整できるので画質が劣化しません。
「ColorNavigator7」以外のキャリブレーション用ソフトは使えるのか
「ColorNavigator7」以外のキャリブレーションソフトも一応使えます。
例えば、x-rite®「i1 Display Pro」の付属キャリブレーションソフトも使えます。
しかし、「ColorNavigator7」以外のキャリブレーション用ソフトを使用した場合はソフトウェア・キャリブレーションを行うことになり、カラーマネジメントモニターを使っている意味があまりなくなります。
よって、CS2740を使うときにあえて「ColorNavigator7」以外のキャリブレーションソフトを使うことはあまりないでしょう。
ソフトウェア・キャリブレーションとは
ソフトウェア・キャリブレーションとは、パソコンから送り出される映像の信号自体の各成分を減らして白色点の色温度・ガンマ・輝度を調整する方法です。映像の信号を減らして調整するため、少し画質は劣化します。
CS2740は測色器外付けのディスプレイ
「CS2740」は測色器は内蔵されていません。
キャリブレーションするときに測色器を外付けして使用します。
どのような測色器が使えるのか
「ColorNavigator7」に対応している測色器であればハードウェア・キャリブレーションができます。
以下は使用可能な測色器の一例です。
(EIZO®のウェブサイト内の「ColorNavigator7」の紹介ページに使用可能なキャリブレーションセンサーの一覧があります)
ColorNavigator7のページ
ディスプレイのキャリブレーションをするだけなら
- i1 Display Pro
- i1Studio
- i1 Display 3
- EX4
- SpyderX
- i1Pro2
など。
i1 Display Pro
i1 Studio
EX4
SpyderX Pro
SpyderX Elite
スマホなどのモバイル機器のICCプロファイルをつくる機能も使いたい場合
「ColorNavigator7」にモバイル機器のICCプロファイル作成機能があるかどうかは当方では未確認です。
ちなみに、以前のColorEdge用の専用キャリブレーションソフト「ColorNavigator6」にはモバイル機器のICCプロファイルをつくる機能があります。
この機能を使うためには、対応している分光測色計を使用する必要があります。
CS2740はColorNavigator6には対応していないようです。
Calibrite社の製品は対応しているのかどうか
X-Rite社の写真・映像向け製品の販売がCalibrite社へ移行した結果、i1Display ProなどX-Riteの測色器の多くが販売終了になり、Calibrite社から後継機と思われる製品が発売されています。
そのため、今からカラーマネジメントモニターの購入を検討する場合、Calibrite社の測色器に対応しているかどうか知りたいところです。
2021年10月29日にEIZO®のサイトで確認した限りでは、Calibriteから発売中の測色器への対応についての説明は見つけられませんでした。
カラーマネジメントモニター EIZO® ColorEdge® CS2740 その他の主なスペック
液晶パネルの種類 IPS
フォトレタッチ作業に十分です。
IPSパネルは、液晶セルの液晶分子の配列方法で最も一般的なTNのパネルの視野角が狭いという欠点を解消した方式です。
現在カラーマネジメントディスプレイとして販売されているディスプレイはほとんどIPSパネルを使っているようです。
サイズ 27型
27型であればフォトレタッチ作業に十分です。
画像データ以外にレイアウトもの作業も行っている人で、A3ノビを実寸で表示して、ツールバーも並べて表示するような作業が必要なら27型は便利でしょう。
複数の画像データを並べて作業する必要がある場合も、27型なら便利でしょう。
例えば色の見本とする過去の商品写真のデータを何枚か表示し、その商品写真を参照しながら別の写真の商品の色を調整するような作業では、余裕があって便利です。
一方、1枚の写真を表示して普通にフォトレタッチを行うだけなら、23型くらいでも十分間に合います。
画素密度 164ppi
画素密度は164ppiということで、フォトレタッチ作業には十分です。
表示色
「約10億7374万色:10-bit対応(約278兆色中/16-bit LUT)ということで、10-bit表示も可能ということで写真の作業に十分で問題ありません。
8-bit表示を行う場合でも実際に表示する色数より多い情報を使って計算した後に表示を行うので、色再現・階調表現など写真の作業に十分で問題ありません。
一般的な写真のデータにとどまらず、CGその他の作業を行う人で10-bit表示が必要な人なら、CS2740で10-bit表示を行って作業できます。
なお、普通の写真を扱うフォトレタッチ作業なら、たいていは8-bit表示で足ります。
参考記事
視野角(水平/垂直、標準値) 178°/178°
液晶表示モードの種類はIPSであることで、視野角は広めの178°です。
フォトレタッチ作業に問題ありません。
輝度 350cd/m2
フォトレタッチ作業に十分です。
フォトレタッチなら通常は80〜120cd/m2くらいの範囲で作業します。
スマホなどの初期状態くらいの明るさを再現して作業する場合にも、160cd/m2前後にできれば十分なので、350あれば問題ありません。
コントラスト比 1000:1
フォトレタッチ作業に十分です。
応答速度 10 ms(中間階調域)
写真の作業をするときには特に問題ありません。
ゲーム用のディスプレイ
ゲーム用のディスプレイなどは応答速度が速い必要があるので3msや1msなどの機種もあります。
そういったディスプレイは、応答速度が速い代わりに液晶表示モードの種類がTNなどであるため視野角が狭目で、画質もカラーマネジメント対応ディスプレイに比べると低いです。
Quick Color Match対応
写真などをプリンターで印刷するとき、カラーマネジメントにそれほど慣れていなくても、ソフトがカラーマネジメント関連の設定をしてくれるソフト「Quick Color Match」に対応しています。
「Quick Color Match」に対応しているプリンター、対応している用紙を使うことで、「Quick Color Match」がカラーマネジメントの設定をしてくれるので、設定を間違わずにうまく出力しやすくなるというものです。
メーカーのページ
各色覚の人にとっての見えにくさを確認できるソフト「UniColor Pro」に対応
血液型と同じように、ものの見え方にもいくつかタイプがあり、グラフィックを作るときはどのような色覚の人にとっても見やすいものになっているか確認する必要があります。
CS2740は各色覚の人にとっての見えにくさを確認できるソフト「UniColor Pro」に対応しています。
このソフトはEIZOのウェブサイトでダウンロードできます。
メーカーのページ
表示モード
AdobeRGB、sRGB、Calibration(CAL)、といったモードがあります。
sRGBモードがあるので、sRGBにしてウェブ用画像を確認したりできます。
スマホ等のデバイスのエミュレーションはできないようである
デバイスのエミュレーション機能は、スマホなど他の表示装置の表示特性をディスプレイで再現する機能です。
ColorNavigator7ではデバイスのエミュレーションは今後対応する予定ではあるようです。
ただし、ColorNavigator6ではデバイスのエミュレーション機能を使えるのはCGシリーズだったので、ColorNavigator7でもし対応したとしてもCSシリーズでは使えない可能性があります。
モバイル機器の表示のICCプロファイルを作成する機能についても、ColorNavigator7にあるのかどうか、CSシリーズに対応しているのかどうか、当方では未確認です。
よって、モバイル機器の表示特性をパソコンのモニターで再現したい、というような少し複雑な作業をしたい場合は、店の人に聞く必要があります。
CS2740は一般的なフォトレタッチ作業やレイアウトものの作業に十分で、動画も扱える
以上のように、CS2740は一般的なフォトレタッチ作業やレイアウトものの作業の両方に十分なカラーマネジメントモニターです。
さらに、高解像度のUHDのモニターであり、一般的なフォトレタッチ用途に必要な条件以上の仕様で、動画も扱えるようなモニターです。
一方、モニター上でモバイル機器の表示をエミュレーションするなどの複雑な作業環境を作らなければならない場合は、他のカラーマネジメントモニターを検討する必要があるでしょう。
以上、フォトレタッチ用途の側面から、CS2740の主なスペックについてみてみました。
CS2740
モニターは中古市場にも多数あるので、まずは良い中古品を探すと良いでしょう。新品を購入するよりも環境負荷を低く抑えられます。
ハードオフ
キャリブレーションを行うために必要な別売りの測色器 EX4
CS2740と測色器EX4のセット
参考記事