いいプリンターを買ったがパソコン画面と色が違い過ぎる、
カラーマネジメント対応のAdobe®のソフトを使用しているがモニターとプリンター出力の色が違い過ぎる、
カラーマネジメントディスプレイを購入したがプリンター出力と色が全然合わない、
そういったことでお悩みの方も多いでしょう。
ここでは、パソコンのモニター画面とプリンター出力の色を合わせるために、最低限必要なツール等についてご紹介します。
前段階の確認 プリンターで印刷する時の設定に間違いがないかどうか
キャリブレーション作業やカラープロファイル作成を行うということ以外に、それ以前の原因でディスプレイとプリンターの色が合わないケースが多くあります。
それは、アプリケーションソフトからの印刷時のプリント設定やプリンタードライバーの設定の間違いです。
例えば、アプリケーションソフトからのプリント設定画面で、プリンタープロファイルの指定が間違っている、といった例が意外に多いです。
以下の記事をご参照の上、設定の間違いがないかということも確認してみてください。
設定が正しければ、プリンターメーカー純正紙を使用する場合はプリンター付属のプリンタープロファイルを使用してある程度のカラーマッチングが実現すると思います。
参考記事
モニター画面とプリンター出力のカラーマッチングに最低限必要なもの
モニター画面とプリンター出力のカラーマッチングに最低限必要なものは、以下の4つです。
- カラーマネジメントに対応したアプリケーションソフト
- ある程度の性能のディスプレイ
- ディスプレイ用キャリブレーションソフトと、測色器
- プリンタープロファイル作成ツール
※プリンターは普通のプリンターで問題ありません。
プリンタープロファイル作成ツールを省略できる例
上記のうち、プリンタープロファイル作成ツールは省略する場合も多いです。
プリンタープロファイルを自作するのは他の作業と比べると少しハードルが高いため、プリンター付属のプリンタープロファイルを使用する場合が多いです。
ただし、プリンター付属のプリンタープロファイルを使う場合は、そのプリンタープロファイルが対応しているプリンターメーカー純正紙を使用する必要があります。
プリンター付属のプリンタープロファイルを使う以外に、用紙メーカーが提供しているプリンタープロファイルを使うこともできます。
高級インクジェット用紙ブランドは、主なインクジェットプリンターに対応するプリンタープロファイルを提供してい場合が多いです。
そのプリンタープロファイルをダウンロードして自分のPCにコピーし、プリンター出力で利用できます。
プリンタープロファイル作成ツールはたいていモニターキャリブレーション機能も含む
たいていのプリンタープロファイル作成ツールはモニターキャリブレーション機能も含んでいます。
そのため、プリンタープロファイル作成ツールが用意できれば別途モニターキャリブレーション専用ツールを用意する必要はない場合が多いです。
カラーマッチングのための、具体的な製品の例
モニター画面とプリンター出力のカラーマッチングに最低限必要なツール類について、具体的な製品をご紹介します。
1.カラーマネジメントに対応したアプリケーションソフト
以下に、カラーマネジメントに対応したアプリケーションソフトの例をあげます。
Adobe® Photoshop® Elements
sRGB、AdobeRGBしか扱わない場合、簡易的な写真編集だけできれば良い場合は「Adobe® Photoshop® Elements」がおすすめです。
Adobe® Photoshop®
sRGB、AdobeRGB以外のRGBカラースペースも扱ったり、またCMYKデータも扱うなど、色々なカラースペースを扱い、複雑な写真編集もする場合はAdobe Photoshopなどが必要です。
Adobe® Illustrator®
2.ある程度の性能のディスプレイ
あまりに低性能なディスプレイでは、モニターキャリブレーションツールを使用したソフトウェアキャリブレーションを行ってもまともな表示にならない場合があります。
そのため、キャリブレーションする場合は、古くて表示が変色してきているなど見ただけできれいな表示ができていないと判断できるようなディスプレイではなく、ほぼ問題なくきれいな表示ができているディスプレイが必要です。
また、輝度、コントラスト、色合いなど最低限の調整ができるディスプレイが望ましいです。
ディスプレイ側で最低限の調整ができないと、モニターキャリブレーションツールで作るディスプレイプロファイルによる補正だけではキャリブレーションしきれない場合があります。
3.ディスプレイ用キャリブレーションソフトと、測色器
たいていのモニターキャリブレーションツールは、ディスプレイ用キャリブレーションソフトと測色器がセットになっています。
一例として以下のようなものがあります。
Calibrite Display SL
X-Riteの写真・映像関連製品の販売がキャリブライト社に移行し、以前はX-Riteから発売されいていたモニターキャリブレーションツールがCalibriteから発売されています。
Calibrite Display SLは初級者向きのモニターキャリブレーションツールです。
メーカーのページ
参考記事
Calibrite ColorChecker Display
Calibrite ColorChecker DisplayはCalibrite Display SLよりも以前から発売されている初級者向きのモニターキャリブレーションツールです。
メーカーのページ
参考記事
X-rite® i1Display Studio(販売終了)
i1Display Studioはi1Display Proよりも少し簡易的なモニターキャリブレーションツールです。
参考記事
datacolor SpyderX Pro
SpyderX ProはSpyder X2 Eliteより簡易的なモニターキャリブレーションツールです。
参考記事
カラーモンキー について
初級者向けのモニターキャリブレーションツールの有名なものにColorMunki Smile(カラーモンキースマイル)、ColorMunki Display(カラーモンキーディスプレイ)があります。
これらの製品は製造終了になったようです。xritephoto.comに製造終了と書いてありました。
参考記事
Calibrite Display Pro HL
Calibrite Display Pro HLは中上級者向きのモニターキャリブレーションツールです。
初級者向きのDisplay SLよりも設定項目や機能が多いです。測定できる輝度の最大値も大きいです。
メーカーのページ
参考記事
Calibrite ColorChecker Display Pro
Calibrite ColorChecker Display ProはCalibrite Display Pro HLよりも以前から発売されている中上級者向きのモニターキャリブレーションツールです。
メーカーのページ
参考記事
X-rite® i1Display Pro(アイ・ワン・ディスプレイ プロ)(販売終了)
i1Display Proはi1Display Studioより上位機種で、複雑な設定を行えるモニターキャリブレーションツールです。
参考記事
datacolor Spyder X2 Elite(SpyderX Eliteの後継機だと思われる)
Spyder X2 EliteはSpyderX Proより上位機種のモニターキャリブレーションツールです。
メーカーのページ
参考記事
datacolor SpyderX Elite(販売終了)
SpyderX EliteはSpyderX Proより上位機種のモニターキャリブレーションツールです。
参考記事
カラーマネジメント対応ディスプレイを使う場合
2.ある程度の性能のディスプレイ、3.ディスプレイ用キャリブレーションソフトと測色器、の機能を全て含む道具としてカラーマネジメント対応ディスプレイがあります。
測色器内蔵のカラーマネジメント対応ディスプレイには、ディスプレイ・キャリブレーションソフト・測色器がセットになった製品が販売されています。
ただし最近は、測色器外付け式の製品の場合は測色器はオプションで別売りになっている場合が多いです。
カラーマネジメントモニターの例
CS2400R本体
CS2400Rの別売測色器
CS400R本体と測色器のセット販売もあります。
CS400R本体+測色器 セット
メーカーのページ
参考記事
4.プリンタープロファイル作成ツール
「プリンタープロファイル作成ツール」は多くは業務用の高価なものです。
個人で買える価格の製品は限られてきます。
ColorChecker Studioはモニターキャリブレーションの機能もあります。
よって、ColorChecker Studioがあれば、別途ColorChecker Displayのようなモニターキャリブレーションツールを用意する必要はありません。
ColorChecker Studioに限らず、たいていのプリンタープロファイル作成ツールはモニターキャリブレーションの機能も含んでいます。
Calibrite ColorChecker Studio(i1Studioの後継機)
X-Riteの写真・映像関連製品の販売がキャリブライト社に移行した結果、i1Studioは販売終了になりました。
Calibrite社 ColorChecker Studioがi1Studioの後継機です。
メーカーのページ
参考記事
X-rite® i1Studio(販売終了)
参考記事
以上の4つのツールがそろえば、パソコン画面とプリンター出力の色を合わせることができます。
補足 プリンタープロファイル作成について
プリンタープロファイルを自作する、または作成を依頼する、というのは結構大変です。
そこで、多くの場合は新規に作らずにプリンターに付属しているプリンタープロファイルを使用して、プリンターメーカー純正紙に印刷する、という方法がとられます。
この方法のメリットは手間がかからず、難易度が低いことです。
デメリットは、以下の2点です。
- プリンターメーカー純正紙しか使えないこと
- プリンターの個体差や印刷結果の経時変化などに対応できず、カラーマッチングの精度が落ちる
参考記事
機器などを買うときの参考情報
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
当然ながら、機器を使用する私たちユーザーもそれら国際問題の当事者の一人です。
仕事や創作活動などを意義あるものにするため、物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選びましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料を使っていないかどうか
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物は武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり、児童労働につながっているものもあるということです。
参考
華井和代「紛争下の性暴力の構造と日本の取り組み」ーデニ・ムクウェゲ医師来日講演会:平和・正義の実現と女性の人権
デニ・ムクウェゲ「コンゴ東部における性暴力と紛争鉱物(日本語字幕)」ーデニ・ムクウェゲ医師講演会2016
【アムネスティ】スマートフォンに隠された真実:あなたのケータイ、「児童労働」につながっていませんか?(日本語字幕付※設定をONにしてください)|アムネスティ日本
参考リンク
参考書籍
「人新生の「資本論」」で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることが説明されていました。
電子機器などを購入する場合、紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうかなど、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかを確認すると良いでしょう。
ウェブサイト等で原料調達に関する取り組みについて記載し、調査結果などを公開しているメーカーもあります。
使用後の製品の回収について説明されているかどうか
物が壊れたら、パソコンやPCモニター等ならPCリサイクルなどに出す、その他の電子機器なら小型家電リサイクルなどに出す、というように法律に従って回収に出す必要があります。
メーカーによっては使用後の機器の回収方法を分かりやすく説明したり、分かりやすい回収申し込みフォームを用意したりしています。
一方、使用後の機器の回収について丁寧とは言えない説明しか載せていないメーカーもあります。
きちんと回収して持続可能な事業活動をしようとしているまじめなメーカーを選びましょう。
パソコンのディスプレイの廃棄方法について 〜資源有効利用促進法に基づいて〜
モニターとプリンター出力の色を合わせる対策を色々とっていくとき、場合によってはディスプレイを買い替えるような場合も出てくるでしょう。
そのため、今までのディスプレイの廃棄のことも考える必要があります。
液晶ディスプレイを廃棄する場合、国内の信頼できるルートで再資源化などの処理がされるようにしなければなりません。
引き取りを依頼する先を間違えると、国際法に違反して海外へ輸出され、適切に再資源化もされないまま現地で甚大な環境汚染や健康被害を引き起こすということになる恐れがあります。
そのような事態はすでに進行し、事態はかなり深刻で、もう待ったなしの状況です。
そのような事態に私たちも知らないうちに加担しているとすれば、写真やグラフィックを美しく仕上げたとしても何の意味もなくなってしまいます。
参考記事
以上、パソコンのモニター画面とプリンター出力の色を合わせるために、最低限必要なツール等についてご紹介しました。
参考記事