モニターキャリブレーションの理屈などの説明は省略して、カラーマネジメントモニターの選び方をみてみます。
参考記事
機器などを買うときの参考情報
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
当然ながら、機器を使用する私たちユーザーもそれら国際問題の当事者の一人です。
仕事や創作活動などを意義あるものにするため、物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選びましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料を使っていないかどうか
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物は武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり、児童労働につながっているものもあるということです。
参考
華井和代「紛争下の性暴力の構造と日本の取り組み」ーデニ・ムクウェゲ医師来日講演会:平和・正義の実現と女性の人権
デニ・ムクウェゲ「コンゴ東部における性暴力と紛争鉱物(日本語字幕)」ーデニ・ムクウェゲ医師講演会2016
【アムネスティ】スマートフォンに隠された真実:あなたのケータイ、「児童労働」につながっていませんか?(日本語字幕付※設定をONにしてください)|アムネスティ日本
参考リンク
参考書籍
「人新生の「資本論」」で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることが説明されていました。
電子機器などを購入する場合、紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうかなど、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかを確認すると良いでしょう。
ウェブサイト等で原料調達に関する取り組みについて記載し、調査結果などを公開しているメーカーもあります。
使用後の製品の回収について説明されているかどうか
物が壊れたら、パソコンやPCモニター等ならPCリサイクルなどに出す、その他の電子機器なら小型家電リサイクルなどに出す、というように法律に従って回収に出す必要があります。
メーカーによっては使用後の機器の回収方法を分かりやすく説明したり、分かりやすい回収申し込みフォームを用意したりしています。
一方、使用後の機器の回収について丁寧とは言えない説明しか載せていないメーカーもあります。
きちんと回収して持続可能な事業活動をしようとしているまじめなメーカーを選びましょう。
ハードウェア・キャリブレーションをできるモニターを選ぶ
カラーマネジメントモニター、カラーマネジメントディスプレイ等と名前が付いている製品には、表示できる色域がsRGBくらいのモニターやAdobeRGBくらいのものなどがあります。
一方、表示できる色域がAdobeRGBくらいでもカラーマネジメントモニターというわけではない製品もあります。
AdobeRGBなど広い色域を表示できるモニターがカラーマネジメントモニターだと思う人もいるかもしれませんが、そういうわけではありません。
カラーマネジメントモニターと普通のモニターの最も大きな違いはハードウェア・キャリブレーションができるかできないかということです。
EIZOやNECなどのモニターでカラーマネジメントモニター、カラーマネジメントディスプレイなどと名前が付いている製品はハードウェア・キャリブレーションができます。
そこで、カラーマネジメントモニターを探す場合は、メーカーからカラーマネジメントモニター、カラーマネジメントディスプレイという名前で発売されていて、仕様の説明などでハードウェア・キャリブレーションができると書いてあるモニターを選べば良いでしょう。
カラーマネジメントモニターではない普通のディスプレイは、多少の輝度・コントラスト、色合いの調整はできても、ディスプレイ本体の内部で表示特性を高い精度で調整するようなことはできません。
そこで、パソコンから送る映像の信号自体を補正して白色点の色・輝度・ガンマなどの調整を行う必要があります。
このような方法がソフトウェア・キャリブレーションです。
カラーマネジメントモニターは、ディスプレイ本体の内部で表示特性を高い精度で調整できるようになっています。
そのため、パソコンから送られてくる映像の信号には手を加えず、ディスプレイ本体で白色点の色・輝度・ガンマの調整などを行います。
このような方法がハードウェア・キャリブレーションです。
以上はあくまでおおまかな雰囲気です。ハードウェア・キャリブレーションをするときにモニター内部で行われていることの詳細はメーカーの人など詳しい人に聞かなければ分かりません。
カラーマネジメントモニターの仕様などの検討の例
キャリブレーション用ソフトが付属しているか別売りか確認する
カラーマネジメントモニターは専用キャリブレーションソフトを使ってキャリブレーションを行うことでモニター内部を調整してハードウェア・キャリブレーションができます。
例えばEIZO®のカラーマネジメントモニターなら、ColorNavigatorというキャリブレーションソフトでモニターのハードウェア・キャリブレーションを行なうようになっています。
カラーマネジメントモニターはたいてい専用キャリブレーションソフトが付属されていたりメーカーのサイトからダウンロードできるようになっていますが、念のためソフトが別売りになっていないか確認すると良いでしょう。
参考リンク
以下はEIZOのカラーマネジメントモニターの専用キャリブレーションソフト「ColorNavigator7」のページです。
測色器が外付けか、内蔵か、確認や検討をする
モニターをキャリブレーションするには測色器が必要です。
測色器内蔵のカラーマネジメントモニターもあります。
測色器内蔵のカラーマネジメントモニターでなければ外付けの測色器を使ってキャリブレーションをします。
オプションとして別売りの測色器が用意されている場合も多いです。
本体と外付け測色器のセットを購入するか、測色器内蔵タイプのモニターを購入するか、などを検討します。
事務所に測色器がすでにある場合は、内蔵測色器やオプションの外付け測色器は必要ないかもしれません。
カラーマネジメントモニターで使用できる測色器は、内蔵測色器やオプションで用意されている外付け測色器に限りません。多くの場合、それ以外にも使用可能な測色器があります。
使用可能な測色器は、ディスプレイ専用のキャリブレーションソフトの仕様の対応測色器の欄などに載っています。
参考リンク
EIZOのカラーマネジメントモニターなら、専用キャリブレーションソフトColorNavigator7の仕様の表に、対応する測色器、キャリブレーションセンサーの一覧が載っています。
色域
モニターの色域はモニターが表示できる色の範囲です。
カラーマネジメントモニターの主な機種では、sRGBをカバーしているもの、AdobeRGBをカバーしているものなどがあります。
sRGBをカバーしているくらいの色域のモニターにするか、AdobeRGBをカバーしているモニターが必要か、検討します。
sRGBくらいの色域のモニターでもAdobeRGBのデータを扱える
カラーマネジメントシステムを正しく利用して、sRGBくらいの色域のモニターでもAdobeRGBのデータを正確に扱えます。
モニターの色域で表示できない色は表示できる範囲に収まるよう「色域圧縮(gamut mapping)」という処理が行われ、表示されます。
2000年代はすでにICCプロファイルを使用したカラーマネジメントシステムがかなり普及してきて、印刷会社等ではAdobeRGBのデータを扱っていましたが、まだAdobeRGBの色域をカバーしたディスプレイはほとんどありませんでした。
ですがsRGBくらいの色域のカラーマネジメントモニターを使用して問題なくAdobeRGBのデータを正確に扱っていました。
AdobeRGBくらいの色域のモニターならsRGBくらいのモニターより表示できる範囲は広い
AdobeRGBくらいの色域のモニターの方がsRGBくらいのモニターよりも表示できる範囲は広いです。
AdobeRGBの風景写真のデータを色域がsRGBくらいのモニターで表示したときに、青空の色がsRGBの色域外の色になっていて実際の色より多少変わって表示されたとします。このデータを色域がAdobeRGBくらいのモニターで表示すると青空もデータが示す通りの色で表示できます。
一般的な写真を扱うならsRGBくらいの色域のモニターでたいてい支障はありませんが、sRGBの色域外の色を多く使ったデータを頻繁に扱うなどAdobeRGBの色をそのまま見れた方が作業上便利ならAdobeRGBくらいの色域のモニターを選ぶのも良いでしょう。
色域以上に、正確にキャリブレーションできることが重要
カラーマネジメントモニターは正確にキャリブレーションができることが重要です。
色域がAdobeRGBくらいのカラーマネジメントモニターを正しくキャリブレーションせずに使ったり、カラーマネジメントモニターでない普通のモニターで色域がAdobeRGBくらいの機種をそのまま使ったりする場合、AdobeRGBのデータを正確に扱うことはできません。
色域がsRGBくらいのカラーマネジメントモニターを正しくキャリブレーションして使うとAdobeRGBのデータも正確に扱えます。
参考記事
表示モード
プリセットの表示モードがいくつか用意されている場合が多く、画面表示をsRGBにするモードなどがあります。
ウェブ用の画像を扱う場合にsRGBモードがあれば便利です。
世間ではsRGBに近い特性でウェブサイトを表示させることが多いので、sRGBモードを使ってその見え方を自分でも簡易的に確認できます。
EIZOのモニターならたいていsRGBモードがあります。
カラーマネジメントモニターをきちんとキャリブレーションし、sRGBモードではなくそのディスプレイの特性のままの表示モードにし、Adobe® Photoshop®でsRGBの画像データを表示すると、正しくsRGB色空間で画像が表示されます。
カラーマネジメントモニターを使い、カラーマネジメント対応ソフトでsRGBのデータを扱うなら、表示モードがsRGBモードでもそれ以外でも問題なくsRGBのデータを扱えます。
同様に、カラーマネジメントモニターを使い、カラーマネジメント対応ソフトでAdobeRGBのデータを扱うなら、「AdobeRGBモード」のような表示モードでなくても問題なくAdobeRGBのデータを扱えます。
一方、カラーマネジメント対応ソフトではない普通のソフトでsRGBのデータを扱う場合は、そのディスプレイの特性のままの表示モードではsRGB色空間では表示されず、「sRGBモード」のような表示モードにするとsRGB色空間でデータが表示されます。
表示色
カラーマネジメントモニターはモニターの内部で信号を調整するための計算をし、その結果を画面に表示します。
計算結果で色数を減らさずに高品質な表示をするためには実際の表示色より多い色の情報を使って計算をする必要があります。
信頼できるメーカーから発売されているカラーマネジメントモニターなら、スペック表に単なる色数だけでなく、パソコンから入力される信号を画面に表示するまでの処理に関わるスペックとして例えば「約1677万色:8bit対応(約278兆色中/16bit-LUT)」「約1677万色(約4兆3475億色中)」などの表示があります。
最終的にフルカラーの約1677万色を表示するために、内部では約1677万色よりはるかに多い色数で計算を行なっているということです。
モニターの仕様の表の「表示色」の欄などを見て、実際の表示色より多い色の情報を使って内部の計算を行なっているかどうか確認します。
信頼できるメーカーからカラーマネジメントモニターとして発売されているディスプレイは表示の品質にはこだわって作られているので、数値をそれほど気にしなくても大丈夫でしょう。
カラーマネジメントモニターにしては異常に安い製品があったとしたら、実際の表示色より多い色の情報を使って計算するような高度な方法をとっていない可能性もあります。
スマホ等のデバイスや3D-LUTファイルのエミュレーションができるかどうか
カラーマネジメントモニターには、スマホやタブレット等のデバイスの表示をパソコンの画面でエミュレートしたり、3D-LUTファイルを読み込んで映画フィルムの特性をエミュレートできる機能をもつものがあります。
EIZOの例では、キャリブレーションソフト「ColorNavigator7」にこのエミュレーションの機能があります。
この機能はモニター本体のモデルによって使えるものと使えないものがあります。
なお、EIZO ColorNavigator7でスマホやタブレットの表示を測定するには、オプションの外付け測色器EX4や内蔵キャリブレーションセンターではなく、ColorNavigatorのモバイル機器の測定機能に対応している分光測色計が必要です。
各機能に対応した測色器はメーカーのウェブサイトで確認できます。
参考リンク
EIZOのモニターの場合、デバイスのエミュレーションができないモデルのモニターでも、ColorNavigator7対応の分光測色計があればスマホ等のICCプロファイルは作成できます。
そして、そのICCプロファイルを目標にしてモニターキャリブレーションを行えば、スマホ等の表示状態をカラーマネジメントモニターで再現することはできます。
参考記事
液晶ディスプレイ共通の諸条件
応答特性
応答速度はフォトレタッチ作業など静止画を扱う作業をするなら気にする必要はほとんどありません。
動画を扱うなら数字が小さい方が良いでしょう。
画素密度
高いに越したことはありませんが、一般的なフォトレタッチ作業をする用途ならたいてい気にしなくても問題ない場合が多いです。
画面のサイズ
A3ノビを表示して、横にツールのパネルも表示できる27型サイズが選ばれることも多いです。
レイアウトものの作業ではなくフォトレタッチなどの作業だけなら24型くらいのサイズでも特に支障はありません。
自分の用途で必要な画面のサイズを検討します。
消費電力
電気を使うほど環境負荷は高くなるので、消費電力は低いものの方が良いでしょう。
PCリサイクル 資源有効利用促進法
購入したディスプレイを廃棄するとき、資源有効利用促進法に基づいてメーカーに回収を依頼します。
きちんとしたメーカーであれば、メーカーのウェブサイトからディスプレイ回収の申し込みができます。
しかし、回収する気が感じられず、説明が不親切なメーカーもあります。
ディスプレイの回収に関する案内をウェブ上で丁寧に行なって、きちんと環境負荷を下げる努力している企業を応援しましょう。
カラーマネジメントモニターの具体例
キャリブレーションの精度、色数など、EIZOのカラーマネジメントモニターなら品質は十分です。sRGBモードのような便利な表示モードも付いています。
カラーマネジメントモニター本体、外付け測色器のセット sRGBカバー率100% 24.1型
EIZOのsRGBカバー率100%の24.1型のカラーマネジメントモニターと外付け測色器のセット販売があります。
専用キャリブレーションソフトは付属しているか、EIZOの公式サイトからダウンロードしたりできます。
このセットだけでキャリブレーションを行なってカラーマネジメントモニターを使用できます。
測色器のEX4は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
カラーマネジメントモニター本体、外付け測色器のセット AdobeRGBカバー率99% 24.1型
EIZOのAdobeRGBカバー率99%の24.1型のカラーマネジメントモニターと外付け測色器のセット販売があります。
専用キャリブレーションソフトは付属しているか、EIZOの公式サイトからダウンロードしたりできます。
このセットだけでキャリブレーションを行なってカラーマネジメントモニターを使用できます。
測色器のEX4は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
カラーマネジメントモニター本体、外付け測色器のセット AdobeRGBカバー率99% 27型
A3ノビ実寸を表示して横にツールのパネルを表示できるくらいの画面サイズが必要なら、EIZOのAdobeRGBカバー率99%の27型のカラーマネジメントモニターと外付け測色器のセット販売があります。
専用キャリブレーションソフトは付属しているか、EIZOの公式サイトからダウンロードしたりできます。
このセットだけでキャリブレーションを行なってカラーマネジメントモニターを使用できます。
測色器のEX4は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
カラーマネジメントモニター(測色器内蔵) AdobeRGBカバー率99% 24.1型
EIZOのAdobeRGBカバー率99%の24.1型、測色器内蔵のカラーマネジメントモニターがあります。
専用キャリブレーションソフトは付属しているか、EIZOの公式サイトからダウンロードしたりできます。
測色器が内蔵されているのでカラーマネジメントモニター本体だけでキャリブレーションを行なって使用できます。
測色器はモニター内蔵型なので、スマホなどのICCプロファイルは作れません。モバイル機器のICCプロファイル作成などをしたい場合は別途外付けの分光測色計が必要です。
カラーマネジメントモニター(測色器内蔵) AdobeRGBカバー率99% 27型
A3ノビ実寸を表示して横にツールのパネルを表示できるくらいの画面サイズが必要なら、EIZOのAdobeRGBカバー率99%の27型、測色器内蔵のカラーマネジメントモニターがあります。
専用キャリブレーションソフトは付属しているか、EIZOの公式サイトからダウンロードしたりできます。
測色器が内蔵されているのでカラーマネジメントモニター本体だけでキャリブレーションを行なって使用できます。
測色器はモニター内蔵型なので、スマホなどのICCプロファイルは作れません。モバイル機器のICCプロファイル作成などをしたい場合は別途外付けの分光測色計が必要です。
映像制作向けの高解像度のカラーマネジメントモニターなど
この他、映像制作向けの高解像度のカラーマネジメントモニターなどもあります。
その他の色々な機能を使いたいときは、サイトなどで確認
EIZOのカラーマネジメントモニターの例では、基本的なモニターキャリブレーション以外にも様々な使い方ができます。
スマホやタブレットの画面を測定して特性を調べてICCプロファイルを作り、カラーマネジメントモニターで再現したりできます。
モニターの白色点の色を作業場で見た紙の色に合わせてキャリブレーションを行なったりもできます。
そういった色々な使い方をしたい場合、モニター本体が対応していなかったり、オプションの外付け測色器EX4やモニターの内蔵キャリブレーションセンサーでは使用できない機能もあるので、自分が使いたい機能に対応しているモニターや測色器をメーカーの公式サイトなどで確認しておいた方が良いでしょう。
ディスプレイの廃棄方法
カラーマネジメントモニターが壊れて使えなくなったときは、資源有効利用促進法に基づいて適正に処分をしましょう。
参考記事
以上、カラーマネジメントモニターの選び方の例でした。
参考記事